大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)1788号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人木田茂晴、同杉之原舜一の上告趣意第一点について。

所論は違憲を主張するけれども、その実質は、団体等規正令又は昭和二三年政令第二三八号の解釈、適用を争うに過ぎないものであって、刑訴四〇五条に規定する上告適法の理由にあたらない。

同第二点について。

しかし、本件は、平和条約発効前の、占領下にあった昭和二四年九月九日頃のことに属し、当時においては、団体等規正令並びに昭和二三年政令第二三八号がともに、日本国憲法にかかわりなく国法として有効に存在したことは、当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第二八六八号同二八年七月二二日大法廷判決集七巻七号一五六三頁)に徴し明らかである。しかも当時団体等規正令並びに昭和二三年政令第二三八号に基く法務総裁の処分の効力を争うことについては我が国の裁判所は裁判権を有しないものとされていたので(昭和二六年(あ)第二三五七号同二七年四月九日大法廷判決集六巻四号五八四頁、昭和二五年(オ)第一四七号同年七月五日大法廷判決集四巻七号二六五頁)、右政令第二三八号第一六条に従い、法務総裁の命令に基き都道府県知事のした処分についてもその効力を争うことはできなかったのである。されば右団体等規正令並びに右政令第二三八号が国法として有効な当時、法務総裁が右団体等規正令に従って、解散を命じ、右政令第二三八号により法務総裁又は都道府県知事が解散団体の財産を接収することは適法な行為であり、又右法務総裁又は都道府県知事の命によりその接収に従事する係員たる公務員の行為も、亦適法な公務執行行為といわなければならない。従って原判決が被告人等の行為を公務執行妨害罪を構成すると判断したことは正当であって、論旨は理由がない。

よって刑訴四〇八条に則り裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例